こぼれる。

本は通勤時間にしか読まない主義なんだけど、
緊迫した雰囲気に耐え切れず、
四部七章から遂に先ほど全部読んでしまった。

普段は感情的である種の軽やかさみたいなものを持つ本ばっかり選んでたから、
その反動でか、長く読めば読むほど感情移入してしまって、
惨劇なのに終わってほしくない気持ちになっちゃったよ。

では、ネタバレ感想＆答えあわせ

まあ答え合わせというのは正しくなくただ踊らされていた・・・
私は惨めな道化だった！！！って感じですね。
予測大体あってないなあ。
大目にみて最初に立ててたヤツのほうが筋としては正しくて、
修正が間違ってるって感じか。

生き残りが結構出た。
賢いのはタツさんだと思う。

敏夫が千鶴を嵌めたとき、
「トッシーかっこいい！」って心の中で叫びました。
全部投げたと思って本当にごめんなさい。
本当にしぶといお人だ。

遂に向き合わない敏夫と静信。
「偽善者」で別れか。
まあお互いの性分はちゃんと理解してるからな。

嘘が上手な辰巳さんと静信のやりとりが好きだった。
頭の良い人たちの会話。
「滝みたいなものかな」
冷静で客観的な虚無主義者。いいなあ。
辰巳さんは生き残ってないともいえない。
ただし、屍鬼は水死するみたいだけど。

眠りを恐れる沙子。
律子と徹の眠り。
ここらへんはぐっときた。

いつのまにか大層強くなっていたかおり。
夏野も昭もできなかったことをしてしまった。
私があの村に居たら、かおりじゃないかなと思う。
最終的にやってしまいそう。
ほんっとうに稀ですが突如たまにかっとなるタイプなんで。
まあこうやって生き残る側に予測しちゃうのが、
この本を読んで散々出てきた「自分だけは」ってやつなのですがね。


後半は人間がとても酷く書かれているけれど、
力を持っているほう、有利なほうが、
生き残るために酷くならざるおえないだけだと思う。
自分が死なないために全力を尽くすのは全ての本能で、
痛みも恐怖も全て人が簡単に死なないようにセットされているものだから。


結局車で出て行ったのは、静信だったということにしておく。
辰巳でも村人でもいいと言えばいいのだが、声が良いみたいだしね。
静信は人狼になったってことなのだろう。
起き上がったわけではないから、助けにくるのも早かった。
屍鬼だと沙子を守ってけないものな。
人狼は血でなくとも生き延びれるとなってたけど、
静信が間接的か直接的か人を殺すのは逃れられない。
自分の為か沙子のためか、そうじゃないと二人で生きてけないから。
でもそれは殺戮や罪じゃない。
うーん。


秩序を外れた人間とあるだけあって、
静信の考えてることはなかなか理解しがたい。

どんなことがあっても殺戮は善としないとした静信。
かおりに死んでもいいと思ってはいけないと諭した静信。
大川を殺した静信。
終わりたいと懇願する沙子を、引き戻した静信。
全部心からそう思っていってるようなところ。
歪みが出てることに気づいているけれど、どのようにも曲がれないところ。

静信が見つけた理由は「絶望していた」ということ。
選んだ答えは「あがく」ということ。

辰巳と一緒で見ていたかったのかな。
生きるてあがくのって、
いつか何かの答えを得たいという希望がなければ出来ない気がする。
一緒に探すのかな。
できれば滝が枯れるまで。

ところで余所行きな静信のお坊さん口調すきですよ。

最後について、正直に好きとは言い難い。
もう村は滅亡だ・・・と思ってた辺りが実は一番展開的には好きだったのかも。 
と思っていたのだが、
あーだーこーだ感想を書いてる内に、まあこれはこれでよいのだと思ってきた。


本当に簡単にまとめると、凄い本でした。
読んでよかった。